『SONS OF SHANTI』ACT.4 二人の2 - 佐藤広顕
2008/09/16 (Tue) 10:35:27
「俺達には力がある。この国のために幾度も戦場を生き抜き、陰ながら誰よりも殺した。そういう人間こそもっと評価されるべきだ。
あんな民間の医療施設の空爆を計画した奴より、AKとRPGで武装したアルカイダの一個小隊を壊滅させた俺達のほうが日の目を見ていいはずだ。そう思うだろ?」
迷彩服を着た小柄な男が負傷した兵士の前で語った。
「…いつかそんな時代がくる?」
「ただ待っていても無駄だ。だが、世界は俺達が創る。今までもそうだ!!
俺達のやり方で、俺達の手段のために目的も問わない!!
合衆国も近隣諸国も、中東もアフリカも認めざる得なくしてやる。
それが俺の自分への忠義だ!!」
小柄な男が力強く拳を掲げた。
聞いていた男は、その話がお伽話のように感じていたが、自分にも生きる目的のようなものが生まれた気がしていた。
彼は生きる糧が必要だった。正直、それは何でもよかった。信憑性に欠いても、『虚無』よりはマシだった。
二人はそれからの戦場で誰よりも多くの働きをした。
失った身体の分、多くの命を奪った。
そんなある日、二人に命令が下った。
「『電子電算制御部隊』…?」
「どうやらNASAと宇宙軍の次世代戦術特殊部隊の開発計画らしい…、だが、これは…、俺達の活躍を恐れた軍上層部が俺達と部隊を切り離すための策だ。」
二人ともそう思った。部隊は二人のカリスマ性に心酔していた。国ではなく、彼等の命令を聞いている兵士も少なくない。そして、他の部隊にも少なからず影響を及ぼしていた。
「どうする?ここで命令違反をするとよくて除隊、下手したら軍法会議だ…。」「いや、チャンスだ。この試験段階の部隊を掌握できる。
俺達なら、いや俺達しか出来ない!!!!」
二人は電電に入隊した。極度のストレスと過酷な訓練で次々とリタイアしていく兵士たち、後遺症を残す者も少なくない。中には死亡者すら出た。
その中で二人は常にトップであり続けた。そしてお伽話だった話を段々と信じるようになった。その信心は純粋で、子が親を慕うようであった。
「いつか必ず、俺達の力を誇示してやる。」
二人は共通の目的を手段に極限状態を生き抜いた。
なぜか二人は、そんな日々に平和を感じていた。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.4 二人の2 - 佐藤広顕
2008/10/01 (Wed) 04:42:36
はっ…!!
男は夢から目を醒ます。
ここ最近流れていなかった涙が頬を伝っていた。
「目覚めた〜?」
後ろから甲高い声で呼び掛けられる。
振り返ると以前まで標的として認識していた顔があった。
「爆発のとき、TWOが脳殻を守ってくれたんだよ。よかったね〜」
そうだ…。大量のワームに喰われTWOと対峙した。いや、させられていた。
俺達は…、結局奴に利用されただけ…。「RYUは…、RYUはどうなった?」
MIUは首を捻り、考えた後、小さく首を振った。
RYOは動かしづらい自分の新しい義体(からだ)の掌を見つめながら、巨大な喪失感にとらわれた。
生きる糧であった存在が失われた。
「あ〜、動きにくいでしょ?
倉庫から引っ張りだしてきたの。
今TWO呼んでくるね〜」
そう言い、駆け出そうとしたMIUの手をRYOは掴んだ。
「いい、呼ばないで。今奴と会ったら、許す自信がないから…。」
「ふぅん、どうしよ、何かできることある?」
「しばらく、そばにいてくれないか?」
MIUは静かに頷いた。
−
「つまり、ニコルとO議員はハナっからグル…か。」
TWOはタバコの火を消しながら、呟いた。
「ユッキー大尉もな…、なるほど、財界と軍司のトップにラッドを仕込み、情報を収集、世間には賢い正義の政治家として慕われていく…と。計算高い奴だ…。
どうする?」
「まぁ、ここで手を引くわけないだろ?」
「…だな」
TWOとTELは話していた。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.4 二人の2 - 佐藤広顕
2008/10/10 (Fri) 14:24:41
−ルーマニア
「ここから別ルートで潜入する」
TELは言った。
O議員の失踪から3ヶ月が過ぎ、TWOたちはその潜伏先を特定した。
ルーマニアの首都ブカレストにある革命広場、その地下に彼は潜伏していた。
チャウシェスク政権下に造られた地下の秘密経路、あらゆう行政機関に繋がり、行き着く先は地下巨大空洞…
「俺は水路から潜る」
soogleが言った。O議員の放った弾丸は運よくどの心臓を傷つけずに貫通し、一命を取り留めたのだった。
「あの野郎に仮を返さないとな…」
「MIUは?」
TWOが聞いた。
「あいつは、まだ若い。ここからは、‘俺達が住んでる世界’だ…」
TWOは静かに頷いた。そして誰も何も言わずに、3人は別れた。
絶対に通ることのない地下鉄の鉄道をTWOは進む。この先に巨大空洞がある。
僅かな裂け目から光が射している。
壁を破壊し、中に入る。
「これは…?」
TWOの目に飛び込んできたのは巨大な球体だった。いや、球体のようだった。あまりにも巨大過ぎて、視界に全てが入らない。ただ真っ黒だった。
コツ、コツ、
足音が近付く、TWOは物陰に隠れた。
二人の武装した兵士が話し出した。
「知ってるか?侵入者がいるらしい。」「ここに?何人?」「人数はわからないが、もう7人も殺られた。しかも全員、首をかっ切られたらしい…。噂じゃ幽霊の仕業だって…」
「あなたたち!!!!無駄口をたたいている暇があるの!!?」
女性の甲高い声が聞こえた。
「はっ、すいません。」
「外の警備は終了。はやく‘ブランキャッスル’に乗って、装備を変えなさい。」
兵士は走って行った。
「そんなとこに隠れても意味ないわ、必ず来ると思っていた。」
女性はTWOの方に向かって声を発した。「ユッキー大尉…」目の前にいたのはユッキーその人だった。
「久しぶりね、TWO、でも残念、もう遅いわ。さようなら」「なっ、待て!!」
ユッキーは巨大な物体に入っていった。
ブザーが鳴り響く。巨大な物体が動き出した。
「全員、装備Bに切り替え、ブランキャッスルに乗り込みたまえ」
O議員の声が放送で響く。
その物体は革命広場は突き上げ、空へと飛び立った。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.4 二人の2 - 佐藤広顕
2008/10/25 (Sat) 01:18:37
「全員乗れたか?」TWOは体内通信でTELとsoogleに聞いた。
「ああ、問題ない、」
「楽勝〜」
TELとsoogleが答える。
「今、ユッキー大尉がいた。あと、変な噂も聞いた。」
「ユッキー大尉…、始めからO議員と…。」
TELは言った。
「それより、端末に侵入して、おもしろいものを入手した。」
「おもしろいもの?」
TWOは聞いた。
「今から送る。」
soogleからプログラムファイルが送られてきた。
「これは!!!!?」
「すごいだろ?どうやらこの球体(たまご)、地球だ…。
限りなく地球に近い物質で構成された循環器官、擬似地球だな…。
つまり、半永久的な運転が可能だ。
恐らく移動は磁場と反重力を使うんだろう。
重力場ならエネルギーを使うが、宇宙空間ならほとんどエネルギーを使わない。正に‘生きる舟’…だな。」
「これが、O議員の望む、神聖GVプログラムを成す要。
地球と生命の圧縮。新しい無限の世界の創造。
そして、摂理の終焉…。」
TELが言った。
「笑えない冗談だ…。GVリーダーのつもりか。」
soogleが言った。
「少し痛い目見せないとな…」
TWOは言いながら、光学迷彩を装着し、潜入を開始した。
階段を駆け上がり、扉を開ける。そこには驚くべき光景が広がっていた。
「サハラ…」
照り付ける太陽の光は本物のそれだった。以前、方舟でウェポンRと闘ったときのホログラムと同じものだろう。
「それにしても…」広い、とTWOは思った。
そこへ、兵士が何人か歩いて来た。
その姿を見て、サハラの風景以上に驚いた。
「強化外骨格!?」
以前苦戦したマリウスに施されたサイボーグ手術、それを量産的に行っていた。「TEL、soogle、見てるか?」
光学迷彩で兵士はこちらには気付いていない。
「ああ、見てる。だがこれは…!?」
「強化外骨格だ。こうなれば摂食能力も生殖能力も失われる。」
「肉体からの脱却…、O議員が望んでいることだ。」
「しかし、こいつら、意志はないのか?」
「完全に心酔しきってる」
「とりあえず、無駄な闘いは避けよう。たまごが擬似地球なら、中心に‘核(コア)’があるはずだ。そこを叩けば、重力の均衡が崩れる。」
全員それぞれが、中心を目指した。
彼らは、誰か一人が事を成せばいいと考えていた。
自分でなくとも、誰か、ただ崇高な使命感のように、そう思っていた。
『SONS OF SHANTI』ACT.3其之弐 - 佐藤広顕
2008/07/16 (Wed) 12:30:17
「あれが神聖GVのカプセルプラント…」
TWOは水面着陸可能ヘリからプラントを眺めた。
巨大だった。
一体どれだけ多くの人々がこのカプセル群に収容されるのだろうか。
「さて、潜入を開始する…」
そう言い、TWOはヘリから飛び降りようとした。
しかし、後方から航空イージス艦が爆音を鳴らしながら、近づいて来た。
その艦には『NICE』と文字が刻まれていた。
「まずいな…
ユッキー大尉、‘レイジング‐ファン’だ。」
TWOはそうユッキーに言い、プラントの屋上へと飛び降りた。
「TWWWWWOOOOOOOO!!!!」
一人、航空イージス艦から飛び降りる人影があった。
大きな音を立て、地面に着地し、TWOと対峙した。
「ここにお前がいるということは…、やはり神の啓示通り」そう言って男は両手に二本の剣を構えた。
TWOは言った。
「ここは戦場でも、被災地でもない、自由の女神様のお膝元だ、お前が来るところじゃないはずだろ…、トミー」
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3其之弐 - 佐藤広顕
2008/07/16 (Wed) 14:00:43
「これは予言だ!!
TWO!!ここは戦場になる。
お前がいるのが何よりの証拠だ。」
トミーは右手の剣の切っ先をTWOに向けた。
「お前と遊んでいる暇はない。
全力で行く!!
死んでも文句言うなよ!!!!」
TWOは両腕を上下前方に構えた。
「殺人古武術‘ピテスティ’…。
そろそろ、俺の華尊慈意武威流と決着を着けよう!!」
二人が同時に走りだし、攻防が繰り広げられた。
「なぜ戦争に加担する?戦争は悲劇しか生まない。」
トミーが闘いの中、問う。
「戦争に関わってない人間などいない。見たくないなら、目を閉じろ。」
TWOは返答した。
「関わり方の問題だ。お前は戦いの善悪に目を向けろ!!」
「そうやって自分の正義を世界に押し付けるつもりか!!?
それで平和が実現するのか!?」
「命はそういう論理で価値観で消費していいモノじゃない!!!!」
「それも固定観念だ!!その思想的な侵略が理不尽や不条理の背景だ。」
「世界には最低限の秩序が必要だ。
ある程度の画一的正義なくして、規範は生まれない!!」
「そう言って、戦争に武力で介入し、死体は増える。」
「そうならないように、俺は俺の正義を信じる!!!!」
「ならば俺も、自分を律するルールの中で、お前達の正義に立ち向かう!!!!」
二人の闘いは、まるで舞を舞う狂言師のように、華麗で、秀逸だった。
どちらの攻撃も掠りはするが致命傷には至らない。
「華尊慈意武威流、九羽鳥閃!!!」
「術式ピテスティ、九鬼!!!」
‘壱一’‘弐二’‘参三’‘仔四’‘伍五’‘陸六’‘膝七’‘捌八’‘玖九’
互いに相殺する攻撃、どれも一撃必殺だった。
二人はまた対峙する。
その時だった。
大きな揺れが、二人を襲った。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3其之弐 - 佐藤広顕
2008/07/18 (Fri) 17:49:08
「なんだ!!?」
よろけろ二人、二人がいるプラントはなんと上昇を始めていた。
そして、浮上した。しかも、海上に出ていた部分はほんの一部で、海面下にはさらに巨大な艦が広がっていた。
「これは?」
トミーが言う。
「単なるカプセルじゃないな。」
TWOは出入口を探した。
「邪魔が入ったな…」
トミーはそう言い、屋上から飛び降りた。
下を見るとイージス艦『NICE』にトミーは着地していた。
「I'm always in yoUr heart.」
手をかざすトミーを乗せ、NICEは飛んでいった。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3其之弐 - 佐藤広顕
2008/08/04 (Mon) 11:00:13
「潜入できたようね」
ユッキーが通信してきた。
「問題ない。」
TWOは浮上したカプセルプラントに潜入していた。
「TWO、今、ニュースで見てるが、マンハッタン沖上空に未確認飛行物体出現…、まさか…」
「そのまさかだ、今飛行物体の中にいる。」
TELからの通信が入る。
「とりあえず、こっちは大丈夫だ。
深部に潜入する。」
TWOは手近にあった端末にアクセスし、飛行物体の情報をダウンロードした。
「ユッキー大尉、この艦は宇宙軍とハビタが移動要塞らしい、これだけでニューヨーク中の人間を収容できるらしい。」「いくら巨大でも、それは物理的に無理よ。
ニューヨークにどれだけの人がいると思うの?
まさか…」
「どうした?
何か心当たりでも?」
「レックフォードが撃った星間ミサイル…、人間の絶対数も減らす気じゃ…」
「ミサイルは迎撃出来たと聞いたが、標的は…、火星の合衆国領か!?」
TWOはレックフォードが言った『計画』という言葉を思い出した。
「TWO、とにかく先を目指して、重要な情報が掴めるかもしれないし、うまくいけば計画の進行を妨害できるかもしろないわ」
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3其之弐 - 佐藤広顕
2008/08/06 (Wed) 10:32:05
「やあ、久しぶりだな」
この声を聞く度に気分が悪くなる。
「電電、なかなかしつこいな…」
RYUが一人で立っていた。
「それはお互い様だ、下界ではクリスマスだと騒いでる最中、俺達は対峙している。
神聖GVプログラムはもうすぐ発動する。この舟はその要。人類の未来を担う『方舟』!!
だが、そんなことはどうでもいい…
重要なのは俺達がこの舟を制御できる!!!!
俺達がこの舟を守っている!!!!
俺達が人類の未来をこの双肩に背負っている!!!!
これだ!!!!!!
その気になればこの舟の支配中枢に侵入して破壊もできる。
永かった…
わかるか!!!?
地を這い、濁を啜って生きてきた。
日々の訓練では必ずどこか身体を失う。
その俺達、電電が!!
宇宙の運命を手中に収めた。
電電部隊は巨神兵となる。」
「お前もAや使途たちと同じだ。
自分を変える勇気もないくせに、社会に対して不満ばかり主張する。
過去のコンプレックスを都合のいい言い訳にして。」
「ふ、
義体化症候群(シェルシンドローム)。貴様も発症しているんじゃないか?
自分をロストしていくことでの喪失感、新しい身体への不信感、自分の存在に懐疑的になるのも無理はない。
自分が生きていると証明できるか?
その意志は、思想は、記憶は、造られたものじゃないか?」「…」
「それでも、闘うのだろう?
俺達はそう育てられた。貴様も同じ世界の人間だ。
バースデーもイヴもニューイヤーも無関係だ。
俺はお前から全てを奪い、俺を満たす!!
さぁ、安息の始まりだ!!!!!!!」
RYUは剣を構え、走り出した。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3其之弐 - 佐藤広顕
2008/08/07 (Thu) 08:43:29
「soogleくん」
幾つもの本を読み終えたO議員がsoogleに話しかけた。
soogleは本を読み続け頭が痛くなっていた。
「何か用か?議員さん。」
「きみの戦闘データを参照していたのだが、‘soogle Earth’というのは、衛星管理システムのことかね?」
「…」
「そうか…
‘soogle’という名、どこかで聞いたことがあると思っていたが…
あなたでしたか、大戦中の英雄、‘プロフェッサーsoogle’。」
「‘教官(マスター)’だ、しかも‘元’、教授(プロフェッサー)の称号をもらったのは除隊後、そう呼ばれたことはない。」
「やはり…
お会いできて光栄です。
あなたが生み出した戦場の衛星管理システムはすばらしい!!リアルタイムで戦況を管理できる。」
「やけに詳しいな…」
「戦場にいたことあるのでね。」
「まぁ、いいや、俺の正体、TWO達には内緒だぞ、隠してるつもりはないが、自分でいいたい。」
「ええ…」
そう言い、O議員はサプレッサー付きの拳銃を出しsoogleを撃ち抜いた。
その場で血を流し、soogleは倒れた。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3其之弐 - 佐藤広顕
2008/08/08 (Fri) 19:02:21
TWOの銃弾は全てRYUに弾かれた。
ワープし、接近してきたRYUに対して、マリウスを沈めた‘虎砲’を放つ、脇腹に命中し、相手の動きが止まった。
しかし…
「ふふふ、術式ピテスティか、時代遅れの化石め」
「…!!!!?」
「貴様のレヴェルで我ら電電の科学力を考えるな!!」
RYUの斬撃はTWOを確実に捉えた。
TWOは大量に出血する。
「素敵にクリスマスカラーに染まっているじゃないか?
救世主(メシア)が生まれたのと同じ日に、この神聖なるプログラムが発動する。どうだ?
気分は。
この記念すべき日に旅立つとは羨ましい。
これでパックス・アメリカーナの完成だ!!!!!!
GV最高!!!!!!」
薄れゆく視界の中、TWOが見たものは自分と同じ姿の幻影だった。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3其之弐 - 佐藤広顕
2008/08/09 (Sat) 11:29:08
「おい、TWO!!
TWO!!!まずい、ロストした。
返事をしろ!!!!
TWWWWWOOOOO!!!!!!!」
――――――
誰が言っていたのだろうか?
たぶんTELか…
脳内の視覚と聴覚を司る部分は辛うじて無事らしい。
RYUが高笑いをしている。
しばらくして、目の前の幻影が幻でないと気が付いた。
「お前は…?
誰だ?
なぜ俺の姿をしている?」
辛うじてまだ機能しているナノマシンで体内通信が出来た。「僕はキミのファンだよ。キミの行動に興味と可能性を感じてね。話がしてみたいと思ったんだ。」
「今はそんな悠長なことを言っている場合じゃない!!」
「わかっている。
今のままじゃ、辛いだろうから、少し楽にするね。」
そう言い、TWOと同じ姿のそいつはTWOの頭に細い長い針を刺した。
「楽になった。どうやって?」
「脳の使わない部分をシャットアウトしたんだ。
そのことで今必要な部分の機能を向上させた。」
「お前…、‘安静なる翼’か?」
「…違う、とだけ言っておくよ。
私は…僕は自分のことを‘安静なる翼’と名乗ったこともないし、思ったこともない。」
「なぜこんなことを?一体何の意味がある?」
「万物は流転する。たとえ、支配者が変わろうとも、また時代は繰り返す。
だけど…
それは諦めだった。私はどこかで、この意見に反発していた。ブラウンさんには影響を受けた人は多い。
でも、私はこの社会の影響の仕方は良くないと思った。
確かに今を享受することがSHANTIかもしれない。
でも、それとより良くしようとする闘争を捨てることは違う!!!!
私は自分のやり方でそれを示したかった。
だけどメディアは私を利用して、ヒーローに祭り上げた…。
そんなとき、キミを見つけた。
キミは闘っていた。何だかキミの存在が今までにない、流転とはほど遠い存在に思えてならなかったんだ。」
「期待されたもんだな?
言っただろう。
今はそんなことまで話している程、暇じゃないんだ。
質問にだけ答えろ!!なぜ電電に見つからない?」
「目を盗んだんだ。」
「不可能だ!!電電の脳殻はEXバージョンだ。」
「私…僕にはこれしか出来ないんだ。それにしても…
助けてもらう態度じゃないよ。」
「気にいらねぇんだよ。他人の格好して、目を盗んで、口では偉そうなこと言って、そんなに不満があるなら、自分を変えるくらいの勇気を見せてみろ!!
理屈屋くんよ。」
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3其之弐 - 佐藤広顕
2008/08/09 (Sat) 19:15:20
会話する二人、そしてそのことを知らないRYUは笑っている。
「理屈屋か…
そういうあなたもえらく頑固者だ。
この状況で助けてくれ、と言ってくれればすぐ助けるのに。この義体(からだ)は、あなたに提供するために持ってきたんです。あなたとの適合率は99.99998%、限りなくあなたの元の肉体に近いコントロールができる。いくつか、サービスもしておきましたが…」
「そうだな…、確かにこの状況は笑えない。
頼む、助けてくれ。」
「わかりました。
この義体を提供します。同時に僕の記憶の一部も譲渡します。
まぁ、それを利用するもしないも、あなた次第ですが…
あとシェルシンドロームには注意してください。
近いといっても異なるもの。
この義体(からだ)はあなたに限りなく近い、別人なんです。」
「心配ない、たかが精神病だ。」
「そう言うと思いました。じゃあコントロールを譲ります。」
そう言い、TWOそっくりの義体が倒れた。
「さあて、そろそろナノマシンも内骨格も機能しなくなるころだろう。
だがこの聖戦(ジハード)のピリオドはこの手で着けさせてもらう!!!!」
RYUは光の剣を握り、高く振りかざした。
「メェェリィィイ・クリスマァァァァアアアス!!
TWWWWWWWOOOOOOO!!!!!!!!!!!」
TWOの身体は粉々になった。
「お前には俺が死んで見えるんだな?」
咄嗟にRYUが振り返った。
「何だと…?
どういうことだ?」RYUは困惑した。
「なるほど、この舟を介して電電の目を盗んでいたのか。
舟からの信号なら無条件に受け取るわけだ。」
TWOが言って、首を振り、肩を回す。
「すごいな、これ、ハビタの時以上だ。
いや、もっと、懐かしい、義体化する前みたいだ。」
TWOは拳を握った。
「さぁて、この義体(身体)の慣らし運転に付き合ってもらうぞ!!電電!!」
「ほざけ!!
もう一度、冥府に送ってやる!!」
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3其之弐 - 佐藤広顕
2008/08/09 (Sat) 19:32:06
マンハッタン沖に浮上した…
ニューヨークはパニックです…
世界の終わりかと…
宇宙人のUFO説が…
どのチャンネルでも同じことをやっている。
トミーはTWOの言葉を思い出していた。
俺が目指すものとは?
しばらくもうこの二つの剣の声を聞いていない。
いや、聞こえない。
いつからだろうかと考えた。
そして、アジアの修業の旅を思い出した。
「ホッツ、行き先変更!!!!」
トミーは決意した。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3其之弐 - 佐藤広顕
2008/08/09 (Sat) 20:09:36
「どうした?
一体…?」
RYOがRYUに駆け寄る、RYUは半身を失っていた。
「やられたよ…」
「一体誰に!!!?
まさか…
奴は?
TWO!!!!!!」
目の前にTWOが無傷でいた。
「TWO!!!!!
待ってろ、RYU、今すぐかの舟のエネルギーを使って生命維持を行う。」
そう言った瞬間、雷撃がRYOを襲った。
「うぐぁ!!」
「血迷ってもらっては困るよ…。」
奥から小柄な男が車椅子で現れた。
「はぁ…はぁ…、…先生、お願いです。RYUを…、助けてやって下さい。」
「君も彼の激情に触れ感化されたか?
ジェノサイド部隊と呼ばれた電電らしくもない。
時に感情は大きな目的を達成する妨げとなる、一人を救うために万人を犠牲にするようなことにもなる。」
「お前は…、まさか!!!?」
TWOはO議員の邸宅で見た写真を思い出した。
「チャールズ・ブラウン…!!!!!
馬鹿な、死んだはず…」
「この世界では、人の生死も、物事の善悪も容易に操作できる。
この世界は足りぬものに満ち満ちている」
ブラウンはそう言い、車椅子を操作し、背を向けた。
「お願いです。先生…」
RYOがRYUを抱き抱え、手をさし伸ばした。
「今電電の遂行すべき優先事項は‘エデン’創造のための‘ピット’へ侵入した異物の排除だ。
そのために無駄な感情は廃してもらおう。‘ピット’の一器官としてな。」
ブラウンがそう言うと、RYOの周りに大量に百足のようものが現れた。
「器官!?
嫌だ!!?俺は…、俺達(電電)は、俺達(電電)でいたぁあい!!!!!!!」
大量のワームがRYUとRYOの二人を覆った。
「これは私の決定ではない、社会規範であり、今日から後、未来永劫『神』でありつづける‘ピット’のAIの決定だ。」
そう言い、ブラウンは去っていった。
「待て!!!」
追おうとしたTWOだがレーザーによう攻撃で妨げられた。
見るとRYUとRYOは人の形を残していなかった。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3其之弐 - 佐藤広顕
2008/08/10 (Sun) 13:32:58
二本の腕に、六本の脚、長い尾に長い首、頭の上から八本の触手、背中からは収束した光を放ち、その光の形態は蝶の羽のようだった。
獣。形状は神話や伝承に出てくる神獣のようだが、材質は機械のようで、醜い。胸部にあるRYOの顔は赤く変色し、頭部にあるRYUの顔は緑色になっていた。
吹き飛んだ半分はワームに覆われている。
「化け物…か?」
TWOは銃を構えたが、その巨大な身体の前にはあまりに非力に感じた。
「そいつは『ウェポンR』だ。次世代の無実防衛機、神々の剣。さあて、化け物と化け物の闘いだ。」どこからかのスピーカーからブラウンの声が聞こえてきた。「君達は歴史の暗部、社会の恥部だ。
だが、生み出したのは我々、秩序と規範だ。その責任を取ろう。愛しい愛しい怪物達よ。思う存分、その性に従い、殺し合え。」
目の前が、急に明るくなった。
どこかで見たことがある景色が広がる。「ここは…?
パヤタス!!!?」
スモーキー・マウンテンの悪臭は現実のそれと同じだった。
「君達に相応しい場所を用意した。
気に入ってもらえたかな?」
「たかが、立体映像だろ?このくらいTELでも作れる。」
そう言った瞬間、TWOは足元のゴミで躓いた。
「あまり見くびらない方がいい、単なるホログラムではない。それは‘エデン’と同じ原理だからな。その空間は、確実に存在する。」
「馬鹿な…」
TWOは信じられなかったが、考えている暇もなかった。
ウェポンRがミサイルモジュールから小型のミサイルを大量に放った。
爆発がTWOを襲う。
なんとか銃弾をミサイルに当て、爆発させる。
その隙に何発か銃弾をウェポンRの頭部に撃ち込むがびくともしない。
「50口径だぞ…」
今度はレールガンを撃ち込まれる。後ろのゴミ山に当たり、破片がTWOを襲う。
TWOは遠距離戦では的になるだけと思い、近接戦闘を試みようとウェポンRに向かって走り出した。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3其之弐 - 佐藤広顕
2008/08/11 (Mon) 22:06:31
動く。
TWOはウェポンRに接近する最中、自身の動きが今までと一線を画すほど鋭く流麗になっていることに驚いた。
義体(身体)がイメージ通りに動く。
それでいてチタンの内殻9mmNATO弾では傷つかないほど頑強だ。
ミサイルが放てない程接近した。
ウェポンRは腕に付属している機銃を構えた。
銃口から狙いを予測し、避けることは今なら容易だった。
無空波を放つ。
TWOの何倍もある身体のウェポンRの身がよじらせる。
ものすごいスピードでウェポンRが走り出し、TWOの周囲を回る。
剣で斬りつけるが、TWO立ち位置を変えずに身体をくねらせるだけで避ける。
ウェポンRは離れ、背中のレールガンを放つ。
TWOは瞬時に銃を構えレールガンの弾丸にぶつける。
頭部の触手で攻撃するが、それを掴み、投げ飛ばす。
ゴミ山に突っ込む。「キュエレェェェエエエ!!!!!」
八本の触手からレーザーを放ち、TWOに襲い掛かる。
それを避け、頭部へ拳を叩き込もうとする。
「キェー!!!!!」
ウェポンRは首から高周波ノコギリを出した。
TWOの右腕が変形し、中から砲身が現れた。
銃声が響く…
ウェポンRは活動を停止し、頭部が転がっていた。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3其之弐 - 佐藤広顕
2008/08/13 (Wed) 16:16:30
TELとMIUとニコルはある病棟の中にいた。
ハビティッツァは入ることができず、外で留守番をしている。
「この病棟は先天性、或いは生後間もなくの事故などで身体を失い、義体化をしたが、極度のシェル・シンドロームに陥った乳幼児の看護施設。
そのほとんどが、一歳になる前に死に絶える。運がよくても4年…。
しかしその中で、10年以上も生き延びている奴がいる…!!」TELは歩を緩めず、MIUとニコルは小走りになっている。
「なぜ、この施設だと?」
ニコルが聞いた。
「えらく前だが、この施設から米情報管理局への大規模なハッキングをかけられた。
7つのセキュリティをわずか25分で破っている。複数犯にしろ、俺とMIU、あとハビティッツァのバックアップがあっても、倍以上かかる。」
「あなたたち以上…!!」
ニコルは眉間にしわを寄せる。
「それに情報管理局が何の反応も示していないのが気になる。
さぁ、ここだ!!!!」TELは扉を開けた。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3其之弐 - 佐藤広顕
2008/08/14 (Thu) 18:57:45
「ここにいましたか…。」
ニューヨークの象徴である自由の女神と方舟‘ピット’が展望できるとある高台にO議員は現れた。
「この一連の事件…、黒幕はきみだったか…、O議員…。」車椅子を操り、建物の影からブラウンが現れた。
「あなたに認められ、初めて、私は社会に認知された。
私だけでない、この社会で成功している人間は全てあなたが許可した人間だ。」「かつて、世界の警察と名乗った国家が分裂したとき、ホワイトハウスという重力場で新たな生命が産声をあげた。
何十億年も前、初めて地球という重力場でアメーバが生まれたように…。
絶対だった権力(ちから)の崩壊、隣国と敵対する社会不安、軍事力の民営化によるならず者国家の台頭。
あらゆる自然環境の偶然が生命を誕生させたように、これらの不安要素が絡み合い我々は生まれた。強大で、緩やかな思想統制を行う強固な秩序と規範。
これが新しい生命。
私、いや、我々だ。」
「人はみな違う、思想の統制などは幻想だ。自由・平等・権利!!
この国が生まれたときの基盤の概念。
あなたはそれを崩壊させた。
企業の株価、政治家のスキャンダル、そして核ミサイルの発射の行使さえ、あなたの一存で決まる。そこに平和(SHANTI)などありません。」「きみはそもそも、平和(SHANTI)を何だと考えている。
戦争の根絶か?
政治での民意の反映か?
全人類の生存権の保障か?
そんなものが実現した世界は過去存在しない。そして、未来永劫誕生しない。
きみの想像する平和(SHANTI)など虚構に過ぎない。」
「戦争がある限り、格差がある限り、貧困がある限り、平和(SHANTI)とは言えない。あなたは戦火と困窮を拡大させている。」
「ふっ、戦争はどうすればなくなると思う?
簡単だ。
全生命が絶滅すれば戦争は確実になくなる。」
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3其之弐 - 佐藤広顕
2008/08/15 (Fri) 15:03:44
「他にもあります。その方法が、神聖GVプログラムです。人々は自分だけの楽園を築き上げ
相対的価値観の氾濫に対応できる平和(SHANTI)はもはやGVだけです。」
O議員は銃を取り出し、ブラウンに向けた。
「なぜ、蟻の巣のなかで働く蟻と働かない蟻が存在するのは知っているな?
では、働く蟻だけを取り除き、その蟻だけで巣を作らせたらどうなる?」
「…」
「また同じ割合だけ、働く蟻と働かない蟻が生まれる。
ふふふ、
働かない蟻は働かせてもらえないのだよ。
働かない蟻を作り上げることで、共通の被差別者を作る。
その共通意識で、脆弱な個という存在が集団を形成できる。一つの意志を持った共同体としてな。
戦争は人間だけのものだと思っていないか?
とんでもない。
戦争は自然界ではいたって自然なことだ。
戦争の根絶は生命の根絶。
理の根絶なのだよ。」
「戦争の原因は個体差だ。
では、その個体差とは何か?
個体差は個々人の記憶の差。
記憶(メモリー)とは何か?
記憶(メモリー)とは情報(データ)だ。
遺伝子工学とIT技術の発達で確かにあなたは確固たる力を得た。
21世紀初頭、ヒトゲノム情報の解析に成功しました。
つまり、生命のデジタル化に成功したということです。
それは人類がデジタル上でも存在できる証。
我々人類は生きるその真なる目的である遺伝情報の伝達を確実に達成できます。そして人間は、肉体からの呪縛から解放され、新しい生命として進化するのです。
私は‘安静なる翼’として、この世界に安息と平穏をもたらす。あなたとは違う、新しい秩序と規範を創造する!!あなたが使った技術を駆使し、あなたを超える。
そして、私は、この神聖GVプログラムのGVリーダーとなる!!!!!!」
ブラウンはゆっくりと車椅子を走らせる。
「魂が、肉体から離れて存在できる?
『肉体(ソーマ)は魂の墓場(セーマ)』か…
私を殺したところで、私が築き上げた秩序と規範は殺せない。
栄華も兵器も共に技術の賜物。
テーゼが生まれればアンチテーゼが必ず生まれる。
それが世の理。
貴様の行動も我々への反発に過ぎない。餓鬼と同じだよ。
世の理を破壊し、革新させようとするその行動が理に縛られた行動なのだよ。
そして、万物は流転する。」
ブラウンは笑ってみせた。
「…」
O議員は銃をしまい、歩いて去って行った。
「私のキセキ、お見せしましょう。」
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3其之弐 - 佐藤広顕
2008/08/15 (Fri) 23:55:32
「これ…?」
ニコルは目を細めた。
「恐らくこいつが、‘安静なる翼’の正体(オリジナル)だ。」
一定間隔で鳴る電子音を発するコンピュータとコードで繋がった頭。
着ている白衣に劣らない程、肌が白い。「あれれ?
10年以上生きているんでしょ?」
その姿は乳幼児の姿と変わらない、ベイビーそのものだった。
TELは無言でコンピュータにアクセスした。
「きみにも会いたかったよ。
TWOよりは話がわかる相手だと思ってる。
今から僕の記憶を送る。」
データがTELに送信される。
「ちっ、なるほど…、まんまと踊らされたわけだな…、クソっ!!!!」
「これが真実です。このことからどうするかはあなた方次第です。」
「そうやって傍観者を決め込むつもりか?
目的は何だ?」
「…恥ずかしいけど、私は世界を変える気でいたのかもしれません。
だけど自分の身体はこんなのだから…、ネットワークを駆使して闘うしかないって思ったんだ。
そして世界の支配者に喧嘩を売った。
だけどあとから私の行動は利用された。だから、怖くなったんだと思う。
自分が世界に悪影響を与えるんじゃないかって…」
「誰だって怖いさ…、お前は逃げてるだけだ。さっきから一人称が変わっている。自分の模索と行動の不安から来る症状だ。」
「はぁ、TWOさんと似たようなことを言うんですね。厳しいな、シェル・シンドロームの患者相手に」
「今は世界を変えようとは思ってないのか?」
「ひょっとしたら、ブラウンの支配のシステムは民意なのかもしれない…、ほとんどの人は強制されていることも知らない。集団心理を巧みに利用して。」
「そんなことが可能なのか?」
「世界史上で最悪な発明品って何だと思います?」
「…?」
「テレビです。テレビは起こった事実を単なる情報として、ただ垂れ流す、戦争もスキャンダルも、バラエティーも視聴者の価値判断に任せられる。
得ようとしなくとも、情報は入ってくる。日々の戦火が死亡者が、数値化され、単なる情報として頭の中で処理される。そして、格差も貧困も戦争も、普遍のものとなった。
わかりますか?テレビによって人々は戦争もスキャンダルも同価値にしたんです。」
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3其之弐 - 佐藤広顕
2008/08/18 (Mon) 21:31:16
「それで人間を操れるとは思えんがな…」
TELは眉間に皺を寄せた。
「『操る』という表現は適切ではありません。本来、独立した個であるものが、緩やかに総意に向かっていくんです。
強固な意思統制力の基に。
『この本が人気』と言えば、人はその本に群がる。
座りづらい椅子には長居したくないから席を立つ。
これらは自己決定ですが、自ら望んでした決定ではないんです。自己決定しているのではなく、自己決定させられている。自分で好きで選択したと錯覚しながら。小さな子供が流行りのテレビを知らなければ、それだけで虐めの対象になります。それを愚かなことと言う大人も時事問題を知らなければ、社会から迫害される。年齢を問わず、テレビがコミュニケーションツールになっているんです。
そして、自分が所属する社会から排されることを怖れる人類は偏った情報操作によって意思を形成される。
そうやってブラウンは国家や個人の‘自己決定’に影響を与える存在となった。
個々人が電脳化した現代ではブラウンはさぞやりやすかったでしょう。
ほぼ総ての人が時間や場所を問わず、情報を無作為に受動するシステムが出来上がったのだから。
ブラウンの言う‘平和(SHANTI)’は完成した。
彼は軍隊や軍需産業の関わる戦争、国家や企業が行う経済競争、NGOや宗教団体が行う救済措置、さらにはその他の生産的及び消費的な活動全ての相互作用こそ平和(SHANTI)だと考えた。殺される者、殺す者、救済する者、無視する者、これらの存在が互いに依存して、万物が流転する。
しかし、反逆者が現れた。」
「それがO議員か…」
「ええ、彼は全人類が異なる思想を持ちながら画一的に存在できる社会を望んだ。
それには個々人が望む世界を個々人の数だけ創ればいいという結論に至った。
自分の世界という殻(シェル)に篭る社会。
アナログな肉体という殻ではなく、デジタルな電脳という殻に閉じ込めることで、平穏と新人類への進化を実現しようとしたのです。
彼は人類…、いえ、生命の存在意義を遺伝情報を過去から未来へ伝える情報媒介と考えていますから、肉体を破棄することに抵抗がなく、さらには目的を達成するためにより優位だとすら考えていたかもしれません。
二人の人間の平和(SHANTI)の認識の差が結果として、この騒乱の引き金となりました。」
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3其之弐 - 佐藤広顕
2008/08/18 (Mon) 22:11:37
「なるほど…、
んっ!?なんだこれは!!!?」
TELが異常に気がついた。
「データを細分化するワームですね。一緒に防げばたいしたことは無いですよ。」
「いや、まずい…、MIU!!!!聞こえるか!?大至急、俺の家に向かってくれ!!
家族が強襲されるかもしれん!!!!」
TELが大声をあげた。
「私が送ったデータですか?」
「それだけならハッキングで済むが、‘安静なる翼’関連のアナログ情報もある。奴はお前(オリジナル)の存在そのものを消去(デリート)し、新世界の‘安静なる翼(英雄)’になるつもりだ。
急げ!!MIU、頼んだぞ。」
MIUは駆け出した。
「待って、私も行くわ!!」
ニコルも後を追った。
TELの家は高層マンションの5階だった。駐車場に車を止め、急いで階段を上がる二人。
MIUがインターホンを押した。
「もしもーし、無事ですかー!!!?」
MIUが大声をだす。
ニコルは銃を構えて、敵に備えた。
「…はい…」
中から少年の声がした。
「あっ、シンペーくん!!元気だった?
変なお客さんとか来てない?」
シンペーというのは、TELの息子だった。
「…うん、大丈夫…だよ。」
シンペーは答えた。「…ふーん、じゃあこれ、お母さんのところに持って行って。」
MIUは郵便入れから丸いものを渡した。
「どうだ?誰だった?」
家の中では、UZIやM11などのサブマシンガンで武装したグループが、女性に銃口を向けていた。
「これママにって…」
シンペーは渡された物を掲げた。
「おい、これ…」
強烈な閃光と爆音が響く。
段々と周りが見えてきた。
「…くん、…ぺーくん、シンペーくん」
ようやくシンペーは聞き取ることが出来た。
周囲の武装した男達は全員倒れている。「あたしが来たからもう安心!!!!」
MIUは胸を張って笑ってみせた。
「ママは?」
「そこまでだ!!!!
ふざけた真似しやがる!!!!」
武装した男が女性に銃口を向け、MIU達に言った。
「ママ!!!!」
「キャロルさん!!」「黙れ!!!!
HQ、今すぐ外に配備している部隊を突入させろ!!!!」
男が通信した。
「どうしたら…?」
ニコルが唇を噛んだ。
「はぁ、しょうがないわね…
あの人に、伝えてちょうだい。
約束破ってごめんなさいって…」
人質の女性は笑った。とその瞬間、相手の銃を奪い、頭を撃ち抜いた。
「人を殺さないって約束」
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3其之弐 - 佐藤広顕
2008/08/19 (Tue) 21:36:46
「まったく、あなたたち、敵の戦力も把握しないで敵陣に突入するなんて…」
エプロン姿の長い黒髪の女性が押し入れから取り出したのはM2重機関砲だった。「戦場じゃ生き残れないわよ。」
M2重機関砲を玄関正面の廊下の先にセットし、構えた。
「戦場で生き残るための講義をしてあげるからよく聞きなさい。」
主婦がそう告げる。サブマシンガンやアサルトカービンを構えた敵兵士が玄関の扉を破り突入してきた。
重機関砲が唸る。
何人もの敵は吹き飛んでいった。
「MIUは後ろのカバー、あなたは次弾装填の準備。急いで!!」
呆然と二人は立ち尽くしていた。
「キャロルさん…?」
MIUが言った。
「CAORUって呼んで」
主婦はそう言い、笑った。
二人は動いた。
「レッスンその1、戦場では慎重かつ迅速に考え動くべし。冷静さを失ってももたもたしても命取りよ。」
CAORUは突入してくる次の敵に対し、的確に弾丸をぶつけた。
「どうして一般家庭にブーニングなんてあるんだ!!!!!」
敵の悲鳴にも似た叫びが聞こえた。
「レッスンその2、敵を叩く時は、持てる火力を最大限に発揮し、徹底的に叩くべし。変な躊躇いや油断は戦局にだって響くわ。」
CAORUの放つ弾丸は家の壁を貫通し、奥の敵をも掃射した。「さ、行くわよ。」
CAORUは立ち上がり、後ろを向いた。
「どういうこと?」ニコルが聞いた。
「レッスンその3、敵の心理や行動を予測すべし。行き詰まった敵は打開策としてグレネードなどの爆発物を投げ込むのよ、敵も人間、考えていることは同じよ。」
CAORUはシンペーを持ち上げ、ベランダへ走った。
「まさか…!?
気は確か!!?ここは5階よ!!!!」
ニコルが声をあげた。
「茂みに落ちれば大丈夫。受け身取りなさいよ」
CAORUは平然と飛び降りた。
MIUとニコルも後に続いた。
飛び降りる最中、上から爆音と爆風を感じた。
着地、と同時にCAORUは受け身をとり、シンペーを離した。ポケットから両手に二丁、拳銃を取り、横にステップしながら射撃した。
バタバタと待機していた敵兵士が倒れる。
「あの二丁拳銃…、まさかモザンビークの‘戦慄の傭兵夫婦’」
敵は悲鳴を上げ、逃げ出した。
「レッスンその4、常に周囲を警戒すべし。戦場ではヘリでも教会でも安全な場所なんて無いわ。」「そこまでよ。」
声の方を振り向くとニコルが銃口を向けて立っていた。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3其之弐 - 佐藤広顕
2008/09/12 (Fri) 22:12:50
マンハッタンの丘、静かな足音がブラウンの後ろで止まった。
「きみか…
この一連の騒動の唯一の不安要素(イレギュラー)、コード‘A’、いや、アッキーと呼んだ方がいいかね?
きみは何が目的かね?」
そう行って初めて、ブラウンは車椅子を動かし、振り返る。
「目的?
そんな陳腐な概念を糧に生きてはいない。」
「…、どういう意味かね?」
「結果、過程、目的、手段、戦争、平和。全て言葉だ。
今日もまた生まれ、また死ぬ。
命が生まれたときから、今まで、未来も、何も変わらない。」
「虚無主義(ニヒリズム)のつもりかね?」
「好きに呼べ。」
アッキーはブラウンに向かって歩き出した。
「自身の安泰を望まぬ人間などおらん!!貴様も人間だ!!
例え、イレギュラーだとしても、時代の規範と秩序が貴様を糾す!!」
アッキーがブラウンの頭を掴み、目の高さを合わせた。
「俺の見ている風景だ…」
「うう…、か、あ」ブラウンはアッキーの瞳を見て奮えだした。
「あ、がは、こ…これは、
ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!」
口や目、鼻や耳から大量に血を流しだした。
そして、息絶え、ピクリとも動かなくなった。
「そう…滅びろ」
アッキーはその場から立ち去った。
『SONS OF SHANTI』ACT.3 Quiet Wing - 佐藤広顕
2008/07/07 (Mon) 15:34:01
「あの爆発と無数の兵士の死体は何だ!!貴様らの仕業か!!」
−アメリカ合衆国宇宙軍第17基地内部
TWO達は襲撃の後、駆け付けた宇宙軍によって身柄を拘束された。
TWOは今、尋問を受けている。
「鎌を持った女を見なかったか?
あの場所から何が無くなった!!!?」
TWOは言った。
「質問しているのはこちらだ!!!!!!」
尋問官が机を叩く。「あれはきみたちの仕業じゃないんだな?」
「手の甲に‘A’の入れ墨が入った男、最近の同意バイオテロ事件の犯人の一人だ。
あと大鎌を持った女と、狙撃をしてる奴もいた。
他は何人か知らない。」
TWOは答えた。信じてもらえるとは思えなかった。
「ハビタのスキルドワーカーと殲滅部隊のCOMANETHI部隊の1師団が潰滅状態になったんだ…。相手は何者だ…。」
尋問官は目頭に拳を当てた。
「何が奪われた?
現場の状況は!?」
TWOは聞いたが尋問官が指示を出し、TWOは独房に連れてかれた。
TWOが入った独房は暗く、横の独房にはニコルが捕まっていた。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3 Quiet Wing - 佐藤広顕
2008/07/07 (Mon) 16:42:39
「なぁ、あんた、あの…、Aの入れ墨の男のこと、‘アッキー’って呼んだよな?
知り合いなのか?」TWOは横の独房のニコルに向かって聞いた。
少しの沈黙の後、ニコルは話し出した。
「彼は…私の恋人、だったのかな…。
私がハビタの新人類計画の施設に勤務していた頃、彼に出会った。
その時、彼は釘で私の爪を叩いて、『ネイル ヒット ネイル』って、ジョークを言ってきたの。
施設にいて、あんなに大声で笑ったこと、無かったな…。」ニコルは顔を上げて思い出した。
「それで交際を?」
TWOは聞いた。
「きちんと告白したわけじゃないけど、私はアッキーと会う時だけが楽しみだった。
人目を避けて、体を重ねたときもあった…。
徐々に実験が激化して、アッキーの心身はボロボロになっていった。
だけど、私の前にいるときは、いつも笑ってくれていた。」ニコルは今度は下を向いた。
「アッキーというのは奴の名前か?」
TWOは聞いた。
「本名じゃない、私がつけたの。
アッキーナ・ヴァレンタイン…。アッキーって呼んでた。
コードがAだったし、施設に来たのが2月14日だったから…。
あなたはどうなの?名前は?本当の名前。」
ニコルもTWOに聞いた。
「名前…、気にしたことも無かった。
戦場では本名は意味をなさない。
戦場でしか生きたことのない俺には本名は無関係だった。」TWOも答えた。
「今まで付き合った人は?」
ニコルは再び聞いた。
「どうして?」
「いいから。」
「7人…。」
TWOは仕方なく答えた。
「その人達のこと、本当に好きだった?」
ニコルの問いにTWOはしばらく沈黙した後で答えた。
「…さあな、だが、心地よかったのは確かだ。どうしてそんなことを?」
「あなたに聞きたいの。戦場でも人を愛せるの?
自分以外の人のこと想えるの?
映画みたいに。」
ニコルは静かに聞いた。
「人は…人を好きになる。
時代や国境、宗教の違いを超えて。
それが『愛』かどうかはわからないが…。
だから人は人間っていうんだろ?
どんな凄惨な戦場でも、ヒトが人である限り『愛』はあるんじゃないか?」
TWOは答えた。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3 Quiet Wing - 佐藤広顕
2008/07/08 (Tue) 14:01:14
「おいそこ!!
何を話してる!!!?」そう言い、兵士が一人、歩いて来た。
「ごほっ」
その兵士が急に倒れた。
そして何人もの黒い隠密作戦服を着た兵士が何人も走って来た。
「遅くなったわね。」
そう言い、一人が覆面を取った。
「ユッキー大尉!?
どうして!?」
TWOは思わず声をあげた。
「説明は後、この奥にTELとMIUがいるから、急いで!!」
ユッキーはそう言い、暗証コードを入力し、独房の扉を開いた。
「来るだろ?」
TWOはニコルに聞いた。
「えっ…、でも…」渋るニコルにTWOは言った。
「自分で決着をつけろ。逃げるのに慣れると二度と立ち向かえなくなるぞ。」
ニコルは力強く頷いた。
「ユッキー大尉、ここも頼む。」
コードを入力し、独房が開く。
「さぁ!!!!行くよ!!!!」
ユッキーは走り出した。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3 Quiet Wing - 佐藤広顕
2008/07/08 (Tue) 14:36:31
「TWO!!!!ユッキー大尉!!」
TELが驚く。
「急いで」
ユッキーがそう言い、コードを入力する。
TELの独房が開いた。
「向かえも頼む。」TELが言った。
向かえの独房にはsoogleがいた。
ユッキーは戸惑った。この独房のコードはわからないわ…。ハッキングでは必要最低限のコードしか調べてないの。」
「BTR148.615だ。」TELが言った。
「流石ね。」
ユッキーはそう言い、扉を開いた。
ユッキーの部隊のデータバンクへのハッキング履歴からTELは情報を盗んだのだった。
「MIUは?」
TWOが聞いた。
「この先の、病棟にいるわ。」
ユッキーは答えた。
「何があった!!?」
TWOが聞いた。
「使途達の電脳にハックしたら攻性防壁にあてられた。」
TELが答えた。
「MIUが!!!!!?」
TWOが驚く。
「話は後にして!!
急いで!!!」
ユッキーが急かした。
TWO達は病棟へ急いだ。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3 Quiet Wing - 佐藤広顕
2008/07/09 (Wed) 16:11:46
病棟への通路の途中で急に目の前に人影が現れた。
「まずい見つかった!!」
ユッキーが言うと、周りの兵士達が一斉に銃を放つ、サプレッサーの付けた銃の音が響く。
しかし、相手は飛んでくる銃弾を全て片手で弾き返した。
影から、出てきて相手の顔が見えた。
「RYO…、マズイ!!電電だ!!!!」
TWOが言った。
その瞬間、後方から射撃が開始され、前方ではRYOが兵士を一人殴り飛ばした。soogleとTELとユッキーが後方の電電部隊を一掃した。
前方の吹き飛ばされた兵士は床に倒れ、ぶつかった壁には大量の血がついている。
「うぉおお!!」
兵士の一人がナイフを構え、RYOに向かったが、一蹴され、天井の電灯に頭を打ち付け、地面に落ちた。
「うゎあ、うゎあああああああ!!!」
兵士が一人、恐怖で腰をついた。
TWOがRYOに跳び蹴りを繰り出す。
RYOはいなす。
待っていたかのようにTWOは回り込み、RYOの脇腹にマリウスを沈めた‘虎砲’を叩き込んだ。
だが、RYOは怯む様子もなく、TWOに裏拳を繰り出した。
ガードは出来たが、衝撃で後方に飛ばされる。
「ちっ!!」
TWOは構えた。
その時、腰を着いていた兵士が一人、銃を構えた。
途端、RYOは正拳突きを放ち、その兵士は四肢がバラバラになった。
辺りは血で染まる。
後ろで倒れていた兵士が二人がRYOの足を掴み叫んだ
「大尉!!ここは迂回して下さい。こいつは必ず仕留めます!!」
ユッキーは彼等がこの状況でどういう行動に出るかわかっていた。だからこそ、胸が痛かったが、決心し、TWO達を連れ、その場を後にした。
「さぁ!!一緒に地獄を見ようぜ!!」
倒れた兵士はRYOの足を掴んだまま、手榴弾の安全ピンを抜いた。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3 Quiet Wing - 佐藤広顕
2008/07/09 (Wed) 19:43:57
後方から爆発音がした。
TWO達は誰一人振り返らなかった。
「ここが病棟か?」TWOは辺りの雰囲気が変わったことに気付いた。
「そう、そこの二番目の扉にMIUがいるはずよ。」
ユッキーは扉を開けた。
「やぁ!!
諸君!!よくここまで来たね!!」
そこにいたのはRYUだった。
「ということはRYOは捕縛に失敗したのかな?まぁ、いい!!」
RYUはビームブレードを構えた。
そして周囲からは電子機器を搭載したアーマーを着込んだ複数の兵士がサブマシンガンのクリスを構えて現れた。
「くそっ!!また電電か!!!!?」
TWOは身構える。
「これを!!」
ユッキーはTWOに自分が装備しているのと同じSCARアサルトカービンを渡し、TELには別バージョンのロングバレルアサルトライフルを渡した。
そしてsoogleにはグロッグのマシンピストルを、ニコルにはシグザウエルのハンドガンを手渡す。
「そんな稚拙な装備で何秒もつかな!!!!?」
RYUが叫び、電電部隊が一斉に襲い掛かった。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3 Quiet Wing - 佐藤広顕
2008/07/09 (Wed) 20:37:16
ユッキー大尉が回りながら、ライフルを何発か発射し、全弾が命中した。バタバタと電電兵が倒れていく。
「無駄弾を撃ちすぎ」
ユッキーはそうとだけ言った。
TWOは電電兵を避け、RYUに向かってカービンを連発し、接近した。
RYUは左腕に装備された強化プラスチックと電磁装甲を使用した盾‘裏甲’を構え、防いだ。
急接近したTWOはカービンで殴り付けた。
だが、RYUは初めて出会った時と同じように、消えて、遥か後方に現れた。
一発の銃弾がRYUに飛来する。
その銃弾をRYUは切り落とした。
「ちっ!!」
TELがライフルを構えて舌打ちした。
「お前…、以前、俺の腕を吹き飛ばしたな…」
RYUがゆっくりと近付く、TELはアサルトライフルを連射した。
しかし、全ての弾丸をRYUは裏甲と光剣を使って弾く、直進の邪魔になった味方の電電兵も構わず、斬り殺した。
「何て奴…!!!」
ニコルが言った。
RYUが斬り掛かる。
TELはライフルで受け止めるが、ライフルも切断し、TELは身体に斬撃を浴びた。
その瞬間、TELは
「いまだ撃て!!」
と叫んだ。
すると周りで電電兵と交戦していたユッキーとsoogleが振り返り、RYUに銃弾を放った。
RYUはまた消えた。
「ふっ、残念…」
そう言う、RYUの足元には細い糸があり、その少し先には、手榴弾が仕掛けてあった。
「ブービートラップ!!!?」
爆発で周囲は黒煙に包まれた。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3 Quiet Wing - 佐藤広顕
2008/07/10 (Thu) 12:44:12
「ええい!!
なぜ、ここに移動するとわかった!!?」
RYUが流血した頭を抑えながら言った。
「少し違うな、移動場所がわかったんじゃない、俺がそこへお前を移動させたんだ。」
TELは淡々と言った。
「くそ…、」
RYUは後ろに下がり、ボタンを押した。
扉が開いた。
中にはMIUと電電部隊が立っていた。
「MIU…」
TWOは気がついた。
「女!!こいつらを消去(デリート)しろ!!」
RYUが言った。
MIUは無言でP90を持って、飛翔した。
「MIU!!!!?」
TWOは叫ぶが、MIUは聞こえないようだった。
空中から射撃を行うMIU、TWOは避けてMIUに接近する。
MIUは流麗な動きで、TWOの攻撃を避け、攻撃してくる。
「ハハハハハハハッ!!!!!!!
貴様ら誰もかれも戦争の道具だ!!!!!!」RYUが叫ぶ、そこへ複数銃弾が飛んでくる。
RYUはまた消えて避けるが、後方の電電兵に当たった。
倒れる電電兵。
「電電の銃をハックしたのか!!!?」
そう言うRYUの先に、電電部隊が装備していたクリスサブマシンガンを構えたTELとsoogleがいた。
「馬鹿な二重三重にロックしといたはずだ!!!!!」
RYUが言う。
「確かに優れた防壁だが、いかんせん構造が単純だ。
お前らの部隊と同じだ。装備はいいが、動きは旧世代だ。」TELが言った。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3 Quiet Wing - 佐藤広顕
2008/07/10 (Thu) 14:41:39
「電電の位相差空間移動技術と原子配列転送技術の応用であるワープアウト、原子配列情報をデジタル上で送信し、転送先で構成することで、位相差空間ゲート無しでのワープを可能にしている。
もちろん使用電力は半端ないだろうがな、どうせNASA辺りの開発だろ?」
soogleが言った。
「俺達はこの部屋に入った時から、兵士達の電脳にハッキングをかけていた。
さすがに自律神経系までハック出来なかったが、情報を引き出したり、ID偽装くらいは出来る。」
TELも言った。
「この部隊もおしまいね、こんなに隊員を失ったなら。」
ユッキーも周囲の電電兵を倒し、RYUに銃を向ける。
「どうする気だ!!?この状況、貴様らのお仲間が敵だぞ!!
せいぜい、殺し合うんだな、戦争は人の醜さを露呈させる。その醜さこそ!!
人の本質だ!!」
そう言い、RYUは消えていった。
「MIU!!
目を醒ませ!!」
TWOとMIUは交戦していた
MIUがTWOにP90を向ける。
TWOは決心した。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3 Quiet Wing - 佐藤広顕
2008/07/11 (Fri) 12:27:52
ー非核大戦中、とある腐敗臭が香る森
「了解した。」
TWOは通信を終え、サングラスをかけて、バイクに跨がった。
目標の場所はここからさほど遠くない。
走っている途中、小さな村落の一画から煙が上がる。
「始まった…か」
TWOはバイクを降り、村へ入っていった。
家屋が炎に包まれていた。
目の前に倒れている村人がいた。
まだ息をしているが、もう長くはない。
「国軍が…、村を、家族を…」
そう言い、村人は絶命した。
爆発音がし、またどこかで煙が上がる。
TWOは急いだ。
国軍と民兵が村人を虐殺していた。
国軍の一人が背負っていた火炎放射器のタンクをTWOは撃ち抜いた。
兵士は引火し、悲鳴をあげている。
「誰だ!!!?」
指揮官らしき男が声をあげる。
「火炎放射器の使用はジュネーブ条約で禁止されているはずだが!!!」
TWOは隠れながら大声をだした。
「これは粛正だ。
戦争じゃない!!」
指揮官は声のする方に叫んだ。
「じゃあ、これも粛正か?」
指揮官は頭を撃たれ、倒れた。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3 Quiet Wing - 佐藤広顕
2008/07/11 (Fri) 15:37:31
「敵襲だぁあ!!!!」国軍と民兵の部隊は銃撃を開始した。
TWOは反撃し、何人き倒すが、国軍の攻撃に当たり、倒れた。
しかし、敵だと思い、攻撃した相手は民兵だった。
国軍と民兵は互いに撃ち合いを始めた。
「ふぅ、」
TWOは家屋の屋根の上からその様子を眺めている。
国軍兵や民兵の電脳にハッキングをかけ、相殺させたのだった。
悲鳴が聞こえた。
TWOはその悲鳴が聞こえた家屋に入ると、民兵が一人、血を流して倒れていた。
奥にはナイフを握った少女がいた。
少女はTWOにも襲い掛かった。
TWOはすぐに少女の腕をとり、ナイフを奪った。
「安心しろ、俺についてくれば、命は助かる。」
TWOはそう言うが、少女は錯乱し、泣きながらTWOを蹴っている。
その時、後ろから、数人の兵が入って来た。
振り向き様にTWOは発砲し、相手を倒す。少女は近くで銃声を聞いて、驚いたのか、静かになった。相手は民兵だった。よく見ると、少女が刺し殺した兵士も、自分が撃ち殺した兵士も少女と同い年くらいの少年達だった。
その時、通信が入った。
「TWO、証拠は抑えたか?」
「ああ、これで国連のお偉いさん方も満足だろ。
この国に条約違反の‘ならずもの国家’のレッテルを貼れる。
あとTEL、生存者がいた…。」
TWOはそう言い、少女を見た。
「生存者…?
村人か?」
TELは聞いた。
「ああ、恐らくな…、とにかくここを脱出する。」
TWOは体内通信を切り、立ち上がった。
「生き残りたければ、ついて来い。」
二人は戦場に出た。「いたぞ!!」
国軍が発砲する。
TWOは銃弾をかいくぐり、敵を倒す。
「妙だな…。」
TWOは疑問に思った。
指揮官が死亡し、村も制圧しているにも関わらず、なぜ彼等は一時的な撤退をしないのだろうかと。
「んっ!!?」
家屋の中に隠れるTWO達に気味な音が聞こえた。
銃撃が開始された。
「まさか…?
アパッチ…!?」
攻撃ヘリの機関砲がこちらを狙っていた。
「急げ、走るぞ!!」TWOは少女の手を取り、走った。
銃撃がTWO達を襲う。
民兵が前方に現れ、発砲した。
弾丸は少女へと向かった。
「ぐ…」
TWOは腕を少女の前に伸ばし、弾丸を受け止めた。
そしてすぐに、反撃した。
「こっち!!」
少女はTWOを引っ張り、二人は森の奥地へと消えた。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3 Quiet Wing - 佐藤広顕
2008/07/11 (Fri) 16:58:07
「ここは…?」
TWOの目の前に、人工的に植えられた若い樹木が並んでいた。
「村の人達が戦争に行って、死んだ人がいっぱいいて、人が死んじゃうと、樹を一本切って、別の世界に送るって言ってた。だから…」
少女は早口で答えた。
「だから樹を?」
TWOの質問に少女が小さく頷いた。
「すごい量だな…。全部一人で?」
TWOはまた質問した。
少女は首を振り答えた。
「友達がいた…」
そう言い、急に少女が泣き出した。
「何があった…?」
TWOは聞いた。
「わたしが…、さっき…」
少女の声は途切れ途切れだった。
「さっきの…」
TWOはそこまで言い、少女が刺し殺した少年兵を思い出した。
その日の夜、TWOは狩りで仕留めた兎を料理し、少女と食事をした。
その後の夜遅く、小さな物音でTWOは目覚めた。
気がつくと、包囲されていた。
TWOは静かに銃をとり、一人を撃った。
その瞬間、周囲から一斉に狙撃が開始された。TWOは避けて、応戦していたが、大声が響いた。
「動くな!!!!!」
よく見ると、少女は敵に捕らえられていた。
TWOは応戦をやめた。
周囲からロープで何人かの黒づくめの兵士が降りてきた。
「その装備、SAS(イギリス陸軍特殊作戦部隊)か?」
TWOは聞いた。
「元SASだ。
今は新大英帝国特殊部隊。」
黒づくめの一人が答えた。
「復古主義者か…」TWOは言った。
「古き良き時代だよ、昔は誇りがあった。
だが、今の首相はどうだ?合衆国と米帝に媚をうり、都市同盟とまで条約を締結した!!
大英帝国は誇りある孤立を通す。」
また一人が言った。
「その子は離してやれ…」
TWOは言った。
「それは出来ん、こいつは中国の貿易会社の社長の隠し子だ」
兵士の返答にTWOは納得した。
「道理で、どの兵も、狙ってくるわけだ。」
TWOは言った。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3 Quiet Wing - 佐藤広顕
2008/07/11 (Fri) 21:36:40
「目的は金か?」
TWOは聞いた。
「それだけじゃない、こいつの親父さんはえらく過保護でな、こいつが事故にあったとき市場に出回ってない新型の脳殻と電脳を使った。
ハビタと共同開発でな。」
兵士が言う。
「じゃあ、中国の貿易会社ってのは、まさか…?」
TWOは驚いた。
「そう桜美林公司だ!!」
兵士が力強く言った。
「業界のトップか…」
TWOは少女の方をチラリと見た。
「話は終わりだ…
おい、お前!!
こいつを殺せ!!
そうすれば、村の連中も生かしておこう。
そいつの銃を取れ!!」
少女はゆっくりと歩きだした。
TWOは銃を少女の前に差し出した。
少女は銃をとった。
そして、ゆっくり、TWOの顔を見た。
TWOは笑っていた。
少女はTWOに銃を向けた。
「さぁ!!殺せ!!」
少女は目をつぶり、引き金を引いた。
銃声が響き、TWOは血を流し、倒れた。
少女は泣きながら、崩れた。
「ハハハハっ!!
よくやった!!」
とその時、TWOが起き上がり、前方の兵士の武器をとり、後ろの兵士を撃った。
その後、周囲の敵を回し蹴りで一蹴し、全員を倒した。
周囲はまた、静寂に包まれる。
「どうして…?」
少女は不思議そうに聞いた。
「これは疑似血液だ。マガジンをすり替えておいたんだ。」TWOは笑って、歩き出した。
「どうした?着いてこないのか?」
TWOは立ち止まっている少女に呼び掛けた。
「でも…、わたし…、撃ったんだよ…」少女は言った。
「ふっ、俺を心配するなんて1000年早ぇよ!!ガキめ!!」
TWOはふざけたように言った。
「せっかく心配してやったのに!!」
少女は笑って、言った。
「それがガキなんだよ!!大人をナメんな〜」
TWOと少女は話しながら歩いていった。
「ねぇ、わたしにも教えて。」
「射撃か?格闘か?どっちも必要だろうけど。」
「ううん、嘘のつきかた。」
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3 Quiet Wing - 佐藤広顕
2008/07/12 (Sat) 17:40:07
MIUが放った弾丸はTWOに直撃した。
MIUのP90の5.7mm弾は防弾ベストを貫通した後、体内で弾が体表面と水平になるように設計されており、弾が体内に残留することで人体に大きなダメージを与えるようになっている。
TWOは血を流し、倒れた。
「トゥゥウウウウウ!!!!」
誰の声かわからないが、叫び声が聞こえた。
MIUはその場で倒れ込んだ。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3 Quiet Wing - 佐藤広顕
2008/07/14 (Mon) 00:14:31
また、知らない天井だった。
それも今まで見たことないようなシャンデリアが吊され、いかにも高級そうなフカフカのベッドで、TWOは目を覚ました。
「お目覚めのようね。」
聞き慣れた女性の声。
「ユッキー大尉…、ここは…?」
TWOはゆっくり体を起こした。
「私たちの出資者の別邸…」
ユッキーは簡単にそう言った。
「出資者…?」
TWOは不思議な単語に困惑した。
「ペンタゴンとハビタの神聖GVの陰謀を阻止するために、私がデルタフォース内に極秘裏に組織した結社‘LOW’。
正直、規模は大したことないわ。
けど確実に巨大化している。
あの陰謀にどこまで大物政治家や軍、経済界の重鎮が関わっているかわからないから迂闊に動けない。」
「マッキー元帥も協力者なのか?」
「ええ、もちろん」
「それでも動けないのか?
この国であの男が掴めない情報が?」
「マッキーが影響を与えられるのなんて、陸軍の一部…
軍でも宇宙軍や衛星軍は管理外、ましてやあの人は一兵卒あがり、財界や政界なんて蚊帳の外。
まっ、それでもかなりの戦力よ。
でも、マッキーでも掴めない情報があるから、この国は恐いの。」
ユッキーは歩きながら、答えた。
「なるほど…、それで俺達が体よく利用されたわけだ。
民間企業が動いている分には組織は安全だ。」
「ごめんなさい…
返す言葉もないわ…。」
ユッキーは下を向いた。
「別にいいさ、そういう関係だ。
PMCと正規軍なんてのは…。」
TWOは笑った。
「やぁ、目が覚めたようだね。」
そこへどこか聞き覚えのある声がした。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3 Quiet Wing - 佐藤広顕
2008/07/14 (Mon) 00:41:58
一人男が、ユッキーとTWOのいる部屋に入ってきた。
「おや?お邪魔だったかな?」
TWOは驚いた。
「ギルバード・O議員…!!!!?
どうしてここに!!?」
「どうしてと言われても…。
ここは私の家でね。」
男は穏やかな声で、答えた。
「じゃあ、まさか…!?
出資者ってのは…?」
TWOはユッキーの方を見た。
ユッキーは答えた。
「そう、彼、ギルバード・O議員よ。」
ギルバード・O上院議員。
ハーバード大学の理工学部を卒業後、大学院に進学。
ガイア理論とサイバーアクト理論を複合させたコスモス理論で博士論文を取得。一躍名を世界に轟かせた。
従軍の後、上院議員戦に出馬、偉業の若さで当選する。
自身でも平和主義者と称し、軍事的、経済的な制裁に反対し、話し合い路線を推進している。
難民受入政策や環境保全プラン政策を発表、法案を可決させている。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3 Quiet Wing - Tel
2008/07/14 (Mon) 20:00:10
「TWO…。目が覚めたのか?」
TELも入ってきた。
「ああ、MIUは無事か?」
TWOは聞いた。
「元気すぎて困ってるぐらいだ、ただ、攻性防壁にやられてからの記憶はないらしい。」
TELは言った。
「話は聞いた。O議員がかくまってくれてるんだろう。」
TWOは言った。
「ああ、あと、soogleがMIUの電脳にダイブしてわかったことだが…、十二使徒はやはりウィルスでメンタルハックされていたらしい。
攻性防壁までプログラムされたある種のロジックボムだが…。」
TELがそこまで言って、渋った。
「どうした?」
TWOが疑問に思った。
「あのウィルスには外部からの改ざん履歴がある。」
TELが言った。
「…!!」
「どちらもスーパーウィザード級のハッカーということには変わりないが…な。」
TELは言った。
「‘安静なる翼’…」
TWOは声に出していた。
「まだ、決まったわけじゃない。
お前も言っていただろう。‘安静なる翼’を名乗るユーザーは多い。」
TELが言った。
「話の腰を折るようで悪いけど、あなたたちを襲撃した人たちがわかったわ。」
ユッキーが話に加わった。
「‘NIVEA'」
TWOが言った。
「知ってるの!!!!?」
ユッキーは驚いた。
「現在世界で最も多くの殺害に荷担しているといわれている殺し屋…、‘NIVEA'。
あの首狩りに、右目への狙撃、そして青い閃光…。
業界じゃ有名だ。」
TELが言った。
TWOも頷いた。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3 Quiet Wing - Tel
2008/07/15 (Tue) 00:36:15
「じゃあ、何が無くなったかは知ってる?」
ユッキーが言った。
「知ってるのか?」
TWOが聞いた。
ユッキーは頷いた。
「宇宙軍のデータベースに侵入して得た情報だけど、ダニエル博士が行方不明で、レックフォードの頭部が発見されなかったようなの。」
「ダニエルとレックフォードの頭…。」
TWOは言った。
「とりあえず、全員を一部屋に集めて、情報の整理を行わないか?」
O議員が言った。
穏やかで説得力のある口調だった。
大きな部屋の中、TWO、TEL、MIU、soogle、ニコル、ユッキー、O議員、そして、ハビティッツァがいる。
誰も窮屈に感じないくらいの大きな部屋だった。
「なるほど…。
発端は十二使徒事件か…。そのウィルスの発信源を特定できないかね?」
O議員は言った。
「今は無理だが、家に帰れば、並列化したスパコンがある。データはもう送信済みだから、じきに連絡が入ると思う。」
TELが言った。
「そうか…。
それにしても…、A、失礼、アッキー君だったかな?
彼の目的は一体何なのだろう…。
神聖GVプログラムのデータディスクとレックフォードの脳殻、ダニエル氏が彼の手に渡っているわけだが…」
「‘SHANTI’…、」
TWOが急に口を開いた。
「‘SHANTI'って何だ?
使徒たちや、レックフォードも言っていた。」
「確か…、サンスクリット語で『平和』という意味の語だよ」
O議員は言った。
「平和…?なぜ、わざわざサンスクリット語で言っている。接点があるのか?」
TWOは自身の疑問をぶつけた。
「調べてみたんだが、国際政治学者や平和論者から聖典とされてる書物があってな、そのタイトルがずばり、『SHANTI論』。著作チャールズ・ブラウンだと…。」
soogleが言った。
「調べてみる価値はありそうだな。」
O議員はそう言い、席から立ち上がった。
「私とsoogle君はチャールズ・ブラウンのことについて調べてみよう。TWO君とユッキー大尉は国防省と宇宙軍の動向を探ってみてくれないか?
TEL君とMIU君、それにニコル君は引き続き例のウィルスの調査と‘安静なる翼’について調べてみてくれないか?」
O議員は役割を割り振った。
「あの…、僕はなにをしたらいいんですか〜?」
言ったのはハビティッツァだった。
「申し訳ない。君のことを忘れてしまっていたよ。」
O議員は笑って見せた。
「おまえはこっちだ。バックアップを頼む。」
TELが言う。
「はい!!TELさん!!」
TWOが眠っている間にハビティッツァはTELになついたようだった。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3 Quiet Wing - 佐藤広顕
2008/07/15 (Tue) 10:56:40
TWOとユッキーは車を走らせていた。
国防省のデータベースにハックした結果、マンハッタン沖に神聖GVの要である、カプセルプラントが建造中という情報を掴んだためだった。
「また信号が赤…」
ユッキーが言った。
「今回は…、あれが最善だった。」
TWOが言った。
「部下を6人も殺したのよ…、指揮官失格だわ。」
ユッキーは言った。
「あの判断をとらなかったら、俺達みんなこうして渋滞にイライラも出来なかった。
最善の判断だ。
元を糾せば、俺が捕まったからだ。」
TWOが言った。
「あなたは正規の軍隊じゃない。」
ユッキーが言う。
「そうだ、誰も彼等の替わりにはならない。
義体や脳殻は交換できても、掛け替えの無いものがある。
だから、自分が替わりになればよかったなんて思うな…。
命はそう安易なものじゃない。」
TWOはそう言い、タバコに火を着けた。
「ありがとう…。
次はもう失敗しない。
あとTWO、この車の中、禁煙よ。」
そう言い、ユッキーはTWOからタバコを取り上げた。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3 Quiet Wing - 佐藤広顕
2008/07/15 (Tue) 12:49:26
「さて、どうするか…?」
TELとMIUは席に座った。
「ウィルスの解析はキャロルに任せてあるし、あとは‘安静なる翼’だが…」
TELが考え込むように、腕を組んだ。
「ねぇねぇ、‘安静なる翼’ってどんな人だと思う?
イケメンかな?」
MIUが急に言った。
「さあな、典型的なパソコンオタクかもしれんぞ。」
TELが笑った。
「TELもオタクじゃん。」
MIUが言った。
「違う、ハッカーだウィザード級のな。」
TELが反論した。
「ちょっと、あなたたち、何もしなくていいの?
こうやって談笑してる場合じゃないでしょ!?」
ニコルが二人に向かって言った。
二人は振り向いた。
「いいか、‘安静なる翼’の名が見え隠れするくらいで、関与してるかも疑わしい。お前さんの旦那との接点もあるかないか…」
TELが言った。
それにニコルは反論した。
「そんなことわかってるわよ!!
だから焦ってるんじゃない!!」
「だからって焦るな!!大切なものを見落とすぞ。」
TELが言った。
「う〜ん、無い。」急にMIUが言った。
「そっちもか…、FBIをあたってみてくれ、俺はICPOの犯罪履歴にウィルスのデータがないか探ってみる。
ハビティッツァ、二人分できついが、バックアップを頼むぞ!!」
TELがMIUに答える。
「アイアイサ〜」
ハビティッツァも答えた。
「あなたたち…、調べてたの?そんないつから?」
ニコルが驚いた様子で聞いた。
「この部屋に入った時からだ。」
TELが自分の頭を叩きながら答えた。
「ごめんなさい。私、何もしてないのに…」
ニコルが下を向いた。
「自分にとって欠け替えのない者が事件に関わっているんだろ?落ち着いていられないのが普通だ。
義体や脳殻の高度化でなんでも取り替えられる時代だ。記憶だって捏造できる。そんな世の中だからこそ、数少ない欠け替えの無いものを大切に思うもんだ。ましてや、好き勝手できる自分じゃないものは尚更だ。
気にするな。」
TELは言った。
「気にすんな〜」
「気にすんな〜」
MIUとハビティッツァが続けて言った。
「私も繋がるわ。」ニコルがTELとMIUの電脳に通信した。
「無茶するなよ、結構な情報量だ。」
TELはそう言って、ニコルの肩に手を置いた。
「セクハラ」
そう言いニコルはTELの手を払い除けた。
Re: 『SONS OF SHANTI』ACT.3 Quiet Wing - 佐藤広顕
2008/07/15 (Tue) 13:47:31
「ブラウン先生の話しは聞いたことがある。彼はいくつもの平和についての書物を著している。」
O議員はsoogleを連れて、邸内の蔵書庫に入った。
「これだ、
『トーマス・モアに見る平和』
『ノヴァーリスの青い花と戦争観』
『戦争と平和と冷戦構造』
『恒久平和論批判』
『核抑止と秩序』…」
O議員はどんどん本を積み上げた。
「あ〜、こういう文系ものはな〜」
soogleが手を挙げた。
「理系ものと言えるかわからないが、
『進化論的和平』
『サイバースペースのSHANTI』…」
またO議員は積み上げる。
「勘弁してくれ…
んっ、‘平和’って言ってるのと‘SHANTI’って言ってるのがあるな?
どういうこった?」soogleは疑問に思った。
「どうやらこの
『普遍的戦争社会の‘SHANTI’』から、何かと‘SHANTI’と使っている。
この時期は…」
O議員は出版年を調べた。
「非核大戦だ…!!」ほぼ同時に二人は声をあげた。
『SONS OF SHANTI』 ACT.2其之弐 - 佐藤広顕
2008/06/28 (Sat) 14:01:03
TWOは対戦車砲を放った。
クリスティアンは笑いながら拡散プラズマ砲を放つ。
二人の間に大爆発が起こり、硝煙とプラスチックの溶ける臭いが漂う。TWOはM4を発射しながらクリスティアンに向かって走る。
クリスティアンは拡散プラズマ砲を盾にしている。
2mくらいまで近付いた瞬間、クリスティアンはプラズマ砲で殴り掛かる。
TWOは防御するが壁まで吹き飛ばされる。構えて笑うクリスティアン。その時、クリスティアンの足元で爆発が起こった。TWOは吹き飛ばされる刹那、グレネードを落としていたのだった。
「ふーっ!!」
クリスティアンは立ち上がった。左側面は血が流れている。
「オッサン、無理すんな。」
TWOがそう言い、また走り出した。
クリスティアンのプラズマ砲とTWOのグレネードランチャーが交差する。互いの距離は1m足らず、どちらが発砲しても巻き込まれる。
二人は目を合わせ、一斉に自分の武器を投げ捨てた。
クリスティアンが殴り掛かる。TWOは避けて下から顎へ蹴り上げる。
クリスティアンの拳は武器保管ケースを破壊し、勢いを留めず、TWOの背中を打つ。
崩れるTWO、クリスティアンがりょうてを合わせ上から振り下ろした。TWOはその力を利用し、背負い投げ、宙を舞うクリスティアン頭側面を蹴り飛ばした。
倒れるクリスティアン、踵落としをTWOは繰り出すが、肩で受けられる。TWOの脚を掴み、壁に叩きつけた。TWOはクリスティアンを蹴り飛ばし、前方に宙返りし、体重を乗せた踵をニ発、叩き込んだ。
「ピテスティもこの程度か?」
クリスティアンが防御をゆっくり解く。
TWOは言った。
「よく‘斧鉞’を防げたな…」
「ただの二段蹴りだ。」
クリスティアンはそう言い、笑った。
Re: 『SONS OF SHANTI』 ACT.2其之弐 - 佐藤広顕
2008/06/28 (Sat) 14:47:51
クリスティアンは武器ケースを投げた。TWOはそれを脚で受ける。後ろからクリスティアンは首を締める。
「さぁ、強化骨格がどこまでもつかな!!!!?TWO!!!!!」
TWOは体をひねり抜け出そうとするが、完全に入っていた。頸動脈を絞められると5秒ともたない、しかも、クリスティアンは首そのものをへし折る力だった。
TWOは手を挙げ、クリスティアンの右目に、親指をねじ込んだ。
しかしまだクリスティアンは離さない。
「貴様は終わりだ、一生命として、俺に喰われる。貴様の肉体も、思考も、意志も、夢も俺が喰う!!!!」
TWOはクリスティアンの絞めている腕を掴み、力を込めた。するとゆっくりとクリスティアンの腕が動いていく。
「馬鹿な!!!!!なんて力だ!!!!」
クリスティアンは叫んだ。
TWOはクリスティアンから離れた。
クリスティアンの右腕は骨が折れ、右目からは血が流れていた。
「これが俺が求めていた闘争だ。弱肉強食の原理。生命(命)の基本概念。」
クリスティアンは笑った。
「うるせぇな…。闘う意味なんて、偉そうに語るなよ…。オッサン。」
TWOは言った。
「次の一撃で終わりだ。」
クリスティアンは表情が硬くなった。
「ピテスティの奥義でも出してくれるのか?」
無言でTWOは構えた。
「あのマリウスを破壊した技か?それとも未だ見ぬ技か?」受け止める自信があってかクリスティアンは構えた。笑顔はもう消えていたが。
TWOが前に出る。
右の拳で相手を突く、クリスティアンは間一髪で避けた。
「はずしたなぁぁあ!!!!」
しかしTWOは跳んで回し蹴りを出した。
「はっ!?そうか、フハハハハッ!!!!
なるほど…、はったりか、そうか、最初の一撃だけに集中させるためだけにあんなことをほざいたか?情けない!!!!!TWOよ、貴様は俺に喰われる寸前だ。さぁ…」
その瞬間、クリスティアンは口か血を吐いた。口からだけではない、鼻や目や、耳からも血が流れている。
「貴様、何を…?」クリスティアンは聞く。
「言っただろ、最初の一撃だって…、嘘はつかない。」
TWOは右拳を挙げた。
「術式ピテスティ、‘無空派’。」
Re: 『SONS OF SHANTI』 ACT.2其之弐 - 佐藤広顕
2008/06/28 (Sat) 23:36:10
「ピテスティ…、魔術だな…、TWOよ!!2の称号を持つお前が、この先、何が出来るか!!!!!?
先に逝って待ってるぞ…。
貴様がどれだけ正しくとも、どれだけ悪しくとめも、その軌跡には無数の屍が横たわる。
その屍を、俺の屍を越えて、どんな未来があるか…?
楽しみにあの世で見ているぞ!!
TWOよ!!!!!!!!!!」
そしてクリスティアンは手榴弾を取り出し飲み込んだ。
「俺は摂理に従って、自然に帰る…。」
クリスティアンは内部から爆発し、血と肉片と内殻が飛び散った。
「TWO…、」
ニコルは駆けて来た。肩に少々の傷を負っているようだった。
「無事か?」
TWOは聞いた。
「あなたよりはね…」
ニコルはTWO傷だらけの身体を見ながら言った。
「いい闘いだった…!!」
ゆっくりと足音が聞こえて来た。
「ヨーロッパ人の言うことは、抽象的でBusinesslikeじゃない…。
だが彼等の歴史と文化には…、敬意をはらおう。」
HabitatのCEO、ジョナサン・レックフォードがそう言いながら、現れた。
横には傷だらけになったダニエルの姿があった。
「ダニエル…、レックフォード!!ダニエルを放せ!!」
TWOは叫んだ。
「この男は世界の‘SHANTI’のために必要だ。」
レックフォードは静かに言った。